賃貸を考える
山形市駅前という好立地に建つ築40年の賃貸物件をリノベーションした。きっかけは水回りの老朽化であったが、単なる更新にとどまらず、「貸しにくい」から「貸しやすい」へと価値を再生させることが求められた。具体的には、一体型の水回りを分離し、フレキシブルで開放的な居室をつくること、西日対策、共用階段の改善など、多岐にわたる要望があった。















スケルトン と リノベーション
長年の改修によって複雑に積み重なった壁や天井は、矛盾を抱えたまま使いにくさを生んでいた。そこで一度すべてをスケルトンに戻し、空間を根本から組み直すことにした。スケルトン化は、既存建物が持つ「余白」を取り戻す行為でもある。そこから再構築されたプランは、東西で明快に性格を分けている。
東側には、木を基調にした天井の高い開放的な居室群を配置。パーティションによって緩やかに分けられ、ワンルームとしても2室としても使える柔軟性を持たせた。西側には、白を基調とした明快な空間に、キッチン・風呂・トイレをまとめ、生活の機能を集約させている。さらに、西日対策や階段への配慮など、限られた予算の中でメリハリをつけながら設計を行った。

リノベーションの意味
リノベーションとは、単に古いものを新しくするのではなく、時代の変化に応じて空間の可能性を引き出す行為である。本計画では、居室と水回りを明快に構成し直すことで、空間の質と使いやすさを両立させ、賃貸住宅としての魅力を再び取り戻した。
建物が持つ時間の積層を尊重しつつも、現代の暮らしに応答するかたちへと生まれ変わらせる。小さな賃貸リノベーションではあるが、そこには建築が社会に寄り添いながら持続していくためのヒントが詰まっている。







「貸すこと」を前提にした合理性と、「住むこと」を想像した空間の豊かさ。その両立こそが、リノベーションの面白さであり、建築が時間を超えて生き続ける力になる。
- data
MYA Apartment
基本情報
- 所在地
- 山形県山形市
- 主要用途
- アパートメント
- 主体構造
- 木造
規模
- 延床面積
- 79.49㎡
工程
- 設計期間
- 2015年6月~2015年7月
- 工事期間
- 2015年8月~2015年9月
敷地条件
- 特になし
