
売り方から考えるカタチ
長町駅直結の高架下商業施設内に計画された小さなスイーツショップである。敷地は、改札を出てすぐの場所にあり、四方を通路に囲まれた島状のポジションにある。この特異な条件は、店舗がどの方向からも視認され、かつアクセスされるという状況を生み出している。

設計では、この「四方が正面」という条件を前向きに捉え、店舗全体を積層された木目のボリュームで構成した。その断面は、まるでチョコレートケーキのオペラのように層が重なり、スイーツそのものの魅力を空間に引き写している。基本モジュールを高さ1200mmとしながら、ショーケース部分は下方に切り欠くことで商品が際立つように操作し、サイン部分は上へ積み上げることで遠方からの認知性を高めている。つまり、構成は単なる装飾ではなく、「売り方」=「商品の見せ方」と密接に結びついている。

この小さな店舗は、ガラスケースに並ぶスイーツを主役としながら、その舞台をシンプルかつ力強いフレームで囲うことで、訪れる人に強い印象を与える。駅の雑踏の中で、視線を引き寄せ、立ち止まらせ、購入の動機を高める——建築的な空間操作と商業的な販売戦略が自然に結びついたデザインである。






小さな島状の店舗であっても、空間の積層と構成を丁寧に操作することで「一粒のスイーツのように記憶に残る建築」が立ち上がるのである。
- data
Patisserie machen nagamachi
基本情報
- 所在地
- 仙台市太白区長町5−1−30 tekute内
- 主要用途
- スイーツショップ
規模
- 建築面積
- 8.64㎡
- 延床面積
- 8.64㎡
工程
- 設計期間
- 2015年5月
- 工事期間
- 2014年11月
敷地条件
- 特になし
