場所 と カタチ
















本計画は、仙台市内の旗竿敷地の突き当たり、震災後につくられた既存擁壁を前提に成立する平屋である。
敷地は大通りから坂を上がる動線の終端に位置し、既存擁壁と階段によって都市側から切り離された独立した「高まり」を作る。設計はまずこの既存の土木的基壇を読み解くことから始まった。基礎を擁壁に干渉させないために建物本体をセットバックし、擁壁際に近接して設ける必要がある部分は、半外部のテラスや玄関ポーチをキャンチレバーや庇で跳ね出すことでつなぎとめる──構造上の分離と空間上の連続を同時に獲得する手法である。

単純な正方形の平面を起点に、眺望軸に沿って対角線上に片流れ屋根をかけ、視線・日射・形状に応じてボリュームを「切る」ことで形を定めている。結果として擁壁は、あたかも新築の基壇として読み替えられ、都市的断面の再編をもたらした。
眺望と空間の編成













内部は「見晴らしの丘」をワンルームに圧縮した操作である。床を段状に設定し、書斎→リビング→ダイニング→リビングテラスへと一段ずつ落ちる連続は、視線の開きと居場所の階層化を生む。天井は床の段差に呼応して下がり、断面的なスケール変化が光と音の分布、身体の振る舞いを微分的に支配する。
貯められた収納ボックスの背に空いた三角の開口は、切り取られた空の窓となり、外界への抜けと内部の換気動線を一手に担う。こうして生成されるのは、屋内でありながら外縁性を帯びた「中間圏」の多様な居場所である
──それぞれの段差が時間の過ごし方を規定し、住み手の行為が空間の意味を更新する。
歩くこと と 内外の一体性











地内の通路や既存階段を経由して到達する行為の連続性を、建築内部の動線へと受け継いだ点が特徴的である。玄関ポーチから玄関、書斎、洗面、浴室、浴室上部のロフトへと続く「長い道」は、移動のリズム自体を居場所化する。書斎の机が中庭へと伸びる構成は、屋内家具と外部領域の境界を曖昧化し、見上げれば空だけが開く贅沢な瞬間をつくる。
歩行を設計的素材として扱うことで、アプローチが場を形作り、場が行為を導く相互作用を生み出している。
モノの居場所と可変性








クローゼットや靴箱の内部を構造の下地を見せた状態で仕上げることは、「未完の器」としての住まいの姿勢を示す。固定化されたフィットメントではなく、住み手が将来にわたって棚や仕切りを付け替えられる余白を残すことにより、時間に対する適応性と生活の変化を受け入れる設計となっている。これは空間を固定的に供給するのではなく、居住行為が空間を完成させる余地を残すという考えである。
構法と地盤の関係性
擁壁に干渉しない基礎のセットバックと、擁壁際へ接近するためのキャンチレバーという組合せは、構造的責任と空間体験の微妙な折衷である。構造的分離(地盤と建築の明確な境界)を保ちつつ、空間的連携を視覚的・機能的に回復する。震災後の地盤・擁壁というネガティブな条件を尊重しつつ、建築は外部インフラとポジティブに協働することを選んでいる。


この住宅は、擁壁という都市的地層を設計の出発点として読み替え、最小限の型(正方形+片流れ屋根)に段差・切断・跳ね出しといった局所的な操作を入れることで、眺望・歩行・環境応答・可変性を一体化した住空間をつくり出した。外形は抑制的だが内部は豊かに層化され、建築は「地形を再編する道具」として機能する。
擁壁の上にもう一枚の地面を敷き、日常と風景を縫い合わせる
──それがこの住宅の最小であり豊かな応答である。
- data
KTK 擁壁上の住処
基本情報
- 所在地
- 仙台市
- 主要用途
- 専用住宅
- 家族構成
- 夫婦
- 主体構造
- 木造 / 基礎 / べた基礎
規模
- 敷地面積
- 344.24㎡
- 建築面積
- 111.80㎡
- 延床面積
- 90.94㎡
工程
- 設計期間
- 2016年3月~2016年10月
- 工事期間
- 2016年11月~2017年6月
敷地条件
- 第2種中高層住居地域・近隣商業地域
- 道路幅員 東5.23m 接道 2.34m































