1坪の茶室のような最小建築
富谷市ののどかな田園風景の中に位置する二ノ関バス停は、1日に数本のバスしか停まらない小さなバス停です。利用者はほとんどが近隣の子供たちで、学校への登下校の際に使われます。従来のバス停は、約3畳(1坪半)の暗く陰湿な小屋のような建物で、子供たちが中に入りにくい印象を与えていました。そこで、近所の大工さんがなんとか子供達に使ってもらえるように、手加工でできる小さなバス停を計画しました。






小ささと身体性のデザイン
設計にあたっては、「小さいこと」の魅力と「身体性」を大切にしました。まず既存の基礎を活かしながら、内部空間を2/3(約1坪)、庇で雨を避けられる半外部空間を1/3(約0.5坪)確保しました。これにより、バスを待つ間に外にいても濡れず、身体感覚に沿った心地よい平面構成となっています。














道路側のファサードは、扇を開いたような形状とし、角度を斜めに振ったガラス建具を配置しました。視認性が高く、内部の様子が外からもよく見えることで、安全性と親しみやすさを兼ね備えています。内部のベンチはU字型に配置され、奥側は座ると頭がギリギリぶつかる高さに設定。身体寸法に寄り添った空間設計により、座る動作や立つ動作が自然に誘導されます。手前の空間は大人が立って待つことも可能で、コンパクトながら多様な利用動線を受け止めます。
手刻みの工芸性
構造材の多くは大工さんによる手刻みで加工されています。扇の根元に垂木が集中する複雑な形状は、プレカットでは対応が困難であり、1本1本丁寧に手作業で仕上げることで、微細な角度や高低差を正確に表現しました。この手刻みの技術は、若い大工の修練の場としても機能しています。素材としての木材の温かみと、人の手の痕跡が空間に息づいているのです。










カタチの魅力―傘のようなファサード
扇を開いたような傘の形状は、単なる視覚的な面白さに留まらず、庇としての機能、美しい陰影の生成、そして小さな身体にフィットする空間的包容性をもたらします。子供が座ると自然に頭を傘の中心に収めるような感覚になり、身体感覚に沿った可愛らしさを演出します。これは、1坪という最小単位の建築でも、空間的な物語性を生み出せることを示しています。


※バス停でありながら、近所の農家の皆さんの草刈りなどの寄り合い所のようなコミュニティの場にもなっている。
二ノ関バス停は、1坪という最小のスケールでありながら、身体感覚に沿った心地よい空間、手刻みによる工芸的な精度、傘のようなファサードによる視覚的親しみを兼ね備えています。小さくとも、周囲の風景と人々の生活に寄り添い、日常にちょっとした喜びと安心感をもたらす建築です。
まるで小さな茶室のように、雨の日も子供たちの心をそっと包み込む、1坪の豊かな空間がここに生まれたのです。


