変化する「家型」の街路としての相談窓口
「建てるジャーナル」は住宅や不動産情報を中心に発信するウェブメディアであり、そのリアルな接点として、宮城県内の大型ショッピングセンターに無料相談窓口を設計した。本計画は、従来の不動産窓口にありがちな小さく閉鎖的なブース配置を脱し、誰でも入りやすい開放感と、新しい住宅体験を提示する場の構築を目指す。VR/ARなどのデジタル技術を積極的に取り込み、物理的な場とデジタルの体験を接続することが設計の核である。

抜けと重なりで生まれる誘引性
一般的な相談窓口は「閉鎖されること」によって安心やプライバシーを担保する反面、初めての利用者を遠ざける。そこで本計画は「入りやすさ」を空間的に設計することを優先した。四つの家型ブースは単独の閉じた箱ではなく、奥行き方向に連続して並ぶことで“層”をつくり、視線の抜けや部分的な隠蔽を同時に成立させる。外部からは街並みのようなリズムが見え、内部へ一歩踏み入れると、ブースの形態変化と重なりが連続的に変化する。その変化が来訪者に対して自然な誘引となり、能動的に奥へ進ませる構成になっている。
視線の移り変わりとスケールの操作が、空間の居心地を決定する。小さな切妻の天井から片流れへと徐々に変わる屋根形態は、身体に対するスケール感の違いを作り出す。低い屋根がつくる包まれ感は相談の場としての落ち着きを生み、開いた屋根や抜けは展示やVR体験のための視覚的な余白となる。こうして“開放”と“包み”を場の連続性の中で往復させることが、日常的に入りやすい窓口の条件を満たす。





モジュールと連続性による多機能な場
4つの家型ブースは、モジュール的に設計されているが、それぞれが微妙に形態を変えている点が重要だ。合板の切り出しによる個々の形状差は、同一素材でありながら多様な内部性をつくる手段であり、製作コストや施工性の中で高い表現力を獲得している。各ブースは打ち合わせスペース、キッズブース、VR展示、休憩・ギャラリーなど複数の用途に柔軟に対応でき、時間帯や利用者層によって機能の切り替えが可能である。
奥行き方向の配列は「歩くほどに見え方が変わる」体験をプログラムとして取り入れている。入口から奥へと進むにつれて、視界・抜け・スケールが段階的に変化し、それが来訪者に対して“場の読み取り”を促す。これにより一つの長い空間が、連続しつつも局所的に異なる“居場所の集合”として知覚される。富谷店での2ブースは利府店のモックアップ的役割を果たし、角の仕上げや詳細の差異を通じた検証のプロセスが設計にフィードバックされている。











デジタルファブリケーションとの融合:素材と精度が生む新しい表現
本計画の造形は、最新のデジタルファブリケーション「SHOP BOT」による合板の精密切り出しによって実現された。これにより、これまで難しかった複雑な合板の形状が経済的に製作可能となり、個々の家型に微細な差を与えることができる。また、切り出し精度が詳細や仕口の合理化を促し、現場での組み立て効率や材料ロスの低減にも寄与する。素材としての合板はそのまま表層となり、意匠と構築の一体化を図ることで、ショップという短期的な用途でありながらも持続性やメンテナンス性を確保する。
デジタルとアナログの関係は、場の体験設計にも現れる。VR/ARの導入は単なる見せ物ではなく、物理的ブースでの会話や資料提示を拡張するツールとして位置づけられている。物理の手触りとデジタルの可視化が相互補完することで、情報取得のハードルが下がり、利用者の理解や意思決定が深まる。






連続性 多様な利用者を想定した配慮




キッズブースの存在は、家族での来訪を想定した重要な配慮だ。遊びの場が確保されていることで親が落ち着いて相談に集中でき、同時に子どもにとっては建築的要素がさりげない教育的刺激となる。視線や音の配慮、半屋外的な抜けをつくることで、相談のプライバシーと開放性のバランスを保っている。加えて、ブース間の通路や展示スペースは、立ち止まって情報を得るための“余白”として機能し、通行動線と滞留動線を混在させることで場の活気を担保する。
建てるジャーナル@富谷店 プロトタイプとディテールの検証
富谷店に設置された2つのブースは、利府店の前段階のモックアップとして計画され、ディテールの違いや角の処理などを実験する場とした。こうした段階的なプロトタイピングは、実際の利用の声や視線の動き、素材の見え方を早期に検証し、本設計へ反映する有効な手段である。モックアップで得られた発見は、利府店の空間構成やユーザー導線、素材の見せ方にフィードバックされ、結果としてより完成度の高い場を実現した。




本計画は、家の原型を素材とデジタルで再解釈し、来訪者の歩行や視線に応答して変化する“街並みのような相談窓口”をつくり出した。合板の形態変化とデジタル技術の接続により、住宅情報というサービスを場所として可視化し、誰もが入りやすく、利用しやすい場のあり方を示している。








