
柔らかな白が包む和菓子空間
仙台市内の緑豊かな緑道のそばにある、小さな和菓子店「菓子処 あんかさ」の店舗です。
この計画では、和菓子が持つ繊細さや手仕事の温かさを、建築でも感じられる空間をつくりたいと考えました。
目指したのは、かしこまった「和」の空間ではありません。白い漆喰、無垢の木、古いガラス、そして柔らかな光。素朴な素材を組み合わせながら、和菓子を選ぶ短い時間にも、ほっと気持ちが落ち着くような場所をつくりました。















店内を包むのは、白い漆喰で仕上げた緩やかな曲線の壁です。
壁を直線で区切るのではなく、角をなくして柔らかくつなぐことで、小さな店内に奥行きをつくっています。光も曲面に沿って少しずつ変化し、時間や見る場所によって、白い壁にさまざまな表情が現れます。
この曲線は、販売カウンターや通路にも自然につながり、人の動きを店の奥へと緩やかに導きます。
空間の入口となるのは、白い漆喰の壁に組み込まれた大きな木製の引戸です。
扉の下部には、飴細工のように表情のあるガラスをはめ込みました。光を透かしながらも向こう側をはっきりとは見せないガラスが、店の中への期待感をつくります。
大きな木の扉を開けると、曲線を描く白い壁と無垢のナラ材でつくったカウンターが現れます。
硬い直線や角をできるだけ減らし、白い壁に光が柔らかく広がることで、店全体がひとつの大きな器のように、和菓子と訪れる人を包み込む空間を目指しました。


材料と光の演出
壁には漆喰を使い、職人が手で塗った跡をあえて残しています。
均一で真っ白な壁にするのではなく、わずかな凹凸やムラがあることで、光を受けた時に柔らかな陰影が生まれます。
販売カウンターには無垢のナラ材を使いました。白い漆喰の中に木の色と木目が加わることで、和菓子を並べる場所に自然な温かさを与えています。
照明には、stained glass_ginga が制作したステンドグラスのペンダントライトを設けました。
古いガラスには、現在の均一なガラスにはない、わずかな歪みや気泡、色の揺らぎがあります。そこを通った光が、漆喰の白い壁やナラ材のカウンターに柔らかく広がります。
漆喰を塗る手、木を加工する手、ガラスを組み合わせる手、そして和菓子をつくる手。
それぞれの手仕事を空間の中に重ねることで、単に商品を並べるための店舗ではなく、和菓子の背景にある丁寧なものづくりまで感じられる場所をつくりました。
多用途性と手仕事の連鎖
店主の奥様は、染色を手がける作家でもあります。
そのため、この店は和菓子を販売する場所として完成させるだけでなく、これから少しずつ表情を変えていける空間として考えました。
季節に合わせて暖簾の色を変える。店内に作品を展示する。異なる分野の作家と一緒に企画を行う。時には小さなギャラリーやワークショップの場所として使う。
そうした変化を受け入れられるように、建築そのものはできるだけシンプルにしています。
一方で、白い漆喰の曲線や無垢の木、古いガラスなど、一つひとつの素材には手仕事の表情を残しました。
強いデザインで使い方を決めてしまうのではなく、さまざまな作品や季節の色を受け止める背景となりながら、空間そのものにも温かさがある。
和菓子、染色、左官、木工、ステンドグラス。それぞれ異なる手仕事が、この小さな場所を通して緩やかにつながっていくことを考えました。

「菓子処 あんかさ」は、和菓子が持つ柔らかさや、手でつくられるものの温かさを、建築に置き換えることから考えた空間です。
柔らかく曲がる白い漆喰の壁。手触りのある無垢の木。少し歪みのある古いガラス。そして、それらの上に広がる穏やかな光。
その中心に、小さな和菓子が並びます。
建築が主張するのではなく、和菓子や人、季節ごとに変わる暖簾や作品を柔らかく受け止める器になることを目指しました。
まるで、ふっくらとしたお饅頭のように。
外から見ても柔らかく、中に入ると優しく包まれる。和菓子をひとつ選ぶ何気ない時間の中に、少しだけ気持ちがほどけるような、小さな幸福を届ける場所です。
- data
菓子処 あんかさ
基本情報
- 所在地
- 仙台市泉区将監10-8-10
- 主要用途
- 和菓子屋
規模
- 主体構造
- 軽量鉄骨造
- 建築面積
- 25.3㎡
- 延床面積
- 25.3㎡
工程
- 設計期間
- 2020年3月~2020年4月
- 工事期間
- 2020年5月~2020年6月
敷地条件
- ステンドグラス:stained glass_ginga
