二世帯が共に暮らしながら個々の木陰(居場所)を見つける「居場所の森」



敷地は仙台市中心部の細い私道に接する狭小地で、周囲を二階建の住宅に囲まれている。斜線制限や近隣建物による日影・採光の制約が強く、通常の二階建では十分な光と抜けを確保しにくい条件だ。こうした“物理的窮屈さ”は、そのまま負荷として受け止めるのではなく、垂直方向へ伸ばすことで都市的な風景(青葉山の稜線や花火)を取り込みうる特性として読み替えられた。結果として塔屋と屋上テラスを設けることで上方に視線を開き、上方の視線を獲得することで住空間の魅力を生む契機にもなっている。

カタチ と 街との接続



外形の跳ね出しと屋根形状はシンプルだが印象的で、建物の下部に設けられた基壇的な扱いや跳ね出しの軒下空間(駐車場)は、敷地と道路・隣地の接点を整理する作用を持つ。都市の断面におけるレイヤー分節(パブリック→プライバシー)を建築的に置換し、街路のスケールと住戸のスケールを滑らかに繋いでいる。こうした扱いは、狭小地でありがちな「閉塞」を抑え、通行者や居住者に対して安心感のある程よい距離感となっている。
狭小地の建ち方 — 巨木(EVコア)を巡る螺旋的構成

建物中央に据えられたエレベーターは、物理的にはバリアフリーの移動装置だが、設計言語としては“幹”である。幹を中心にしてスキップフロアが点在することで、周辺に小さな居場所が点在する螺旋状の動線網をつくる。これは同心円的な均一分配ではなく、不均質なリズムを持つことで各階に固有の居心地(距離感・視線・天井高さの差)を与える。結果として、「家族の共有領域」と「各自の私領域」を断面的に緩衝しつつ垂直に連結することが可能になっている。
スキップフロアと居場所 — 「道」としての一階から屋上までの連続性















玄関(軒下の駐車場)→リビング→ダイニング→光井戸へと続く一連の床段差は、床の連続性が“道”性を帯びるようにデザインされている。つまり一階の動線は都市側(道路)からそのまま屋内へ引き込まれ、床や天井の仕上げが巻き込むように連続することで、都市の歩行経路と内的なパブリック領域が接続される。この「道」は家族の集合や来客の受け皿となる一方、スキップによる半階のズレや小さな階段はベンチや読書コーナーのような個別の居場所を生む。中間階(LDK)は上下の世帯の緩衝帯として機能し、一階の公共性と二階の私的空間を滑らかに切り替える。こうした局所的な居心地のバリエーションが、二世帯居住という家族構成に対して柔軟な関係性の場を提供する。

一階の「道」と二階のプライバシー — 距離感のつくり方












一階は都市とつながる“公共的リビング/ダイニング”として設計されており、床の連続と大開口で外部の気配を取り込むが、外からの視線を遮りつつ居心地を保つプライバシー配慮がなされている。一方、二階は勾配天井に沿った屋根裏的な落ち着きのある寝室群や子供室が連なり、生活のリズムが静かに確保される。エレベーターコアはこの二つの領域を“距離を保ちつつ”瞬時に繋ぐ役割を担う——必要なときは近づき、個々の時間を尊重したいときは離す、というほどよい「距離の操作」がここで実装されている。螺旋的な空間構成は、同居の緩やかな親密性を空間の動線として表現している。

内部では無垢材やタイル、パンチングメタルの階段など異なる質感が段差とともに織り合わされ、光の入り方と相まって各居場所に異なる触覚的印象を与える。
採光・通風・環境 — 光井戸とハイサイドライトの役割






隣家に囲まれた条件下での最大の課題は日照と換気である。解法として、敷地奥に設けた光井戸と、階段室に設けたハイサイドライト(高窓)を組合わせ、大きな吹抜けを通じて自然光を下階まで落とす戦術が取られている。この手法により一階の深部まで柔らかな光が回り込み、視覚的な広がりが生まれる。また屋上テラスは外気を取り込む“微気候の拠点”として機能し、夏期の居場所拡張や通風経路の確保にも貢献している。これらはパッシブな環境制御を軸にした、都市型住宅に適した実践である。
車椅子利用のご両親がいるため、EVは単なる利便装置に留まらず、生活の連続性を保証するインフラである。スキップが生む半階分の変化は“発見”や多様な居場所を生む一方で、身体的制約を持つ住人の移動を阻まないよう、EVという水平・垂直の選択肢を併設している。「ほどよい距離感」で、世代間の生活リズムの違いを建築的に吸収している。

夜景






この住宅は、狭さという制約を単なる不足にしない「逆転の発想」を体現している。巨木のようなEVコアを軸に、スキップフロアが織り成す断面的な豊かさ、光井戸とハイサイドライトによる縦の光導線、外形の都市的応答、そしてバリアフリーを両立する動線設計が一体となって、二世帯が共に暮らしながら個々の木陰(居場所)を見つける「居場所の森」をつくり出している。
――狭さを豊かさに変える、この家は都市の中で家族それぞれが自分の“木陰”を見つけるための住処である。


- data
HCM 二世帯で住む、巨木の住処
基本情報
- 所在地
- 仙台市
- 主要用途
- 専用住宅
- 家族構成
- 夫婦+子供2人+両親
- 構造・構法
- 主体構造 / 木造 / 基礎 / べた基礎
規模
- 構造
- 2階建て+塔屋
- 最高高さ
- 9.225mm
- 敷地面積
- 124.17 ㎡
- 建築面積
- 74.49㎡ (建蔽率59.99%許容 60%)
- 延床面積
- 123.60㎡ (容積率99.54%許容160%)
- 1階
- 51.65㎡
- 2階
- 70.43㎡
- 塔屋階
- 7.94㎡
工程
- 設計期間
- 2019年 1月~2019年9月
- 工事期間
- 2019年 10月~2020年4月
敷地条件
- 第2種中高層住居専用地域 準防火地域
- 第2種高度地区 接道 6.81m
- 道路幅員 西4.0m 駐車台数2台
メディア掲載
インフォメーション
写真
小関 克朗






























